2光子マイクロ光造形
2光子マイクロ光造形法は、超短パルスレーザーを用いて光硬化性樹脂を硬化させて、微小な立体構造を自在に作製する3Dプリンティング技術です。この技術は、我々が世界に先駆けて提案・実証した技術[1]で、今では世界中で活用されています。写真のウサギモデルは、この技術を用いて毛髪上に作製したものです。ドラえもんの学習まんがでも紹介されました[2]。このように微小な立体構造を0.1µmの加工線幅で造形することができます。丸尾研究室では、このような造形装置を独自に開発し、医療、マイクロマシン、フォトニクスなどへの応用研究を行っています[3]。
2光子マイクロ光造形法の造形方法[1]
2光子マイクロ光造形法で毛髪の上に造形したウサギモデル[2]
References
[1] S. Maruo, O. Nakamura and S. Kawata, “Three-dimensional microfabrication with two-photon absorbed photopolymerization,” Optics Letters 22, no.2, 132-134 (1997).
[2] 学習まんが ドラえもん ふしぎのサイエンス ミクロのサイエンス(小学館) 2021年1月出版
[3] 丸尾昭二,“3次元マイクロ・ナノ光造形による機能構造体の開発,” スマートプロセス学会誌,第3巻,第3号, 175-181 (2014).
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1光子マイクロ光造形法
1光子マイクロ光造形法は、青色や紫外レーザーを用いて光硬化性樹脂を硬化させて、μmからcmサイズの立体構造を自在に作製する3Dプリンティング技術です[1]。光硬化性樹脂を用いて透明な立体構造[2]を作るだけでなく、セラミックス微粒子を混ぜて造形することで、さまざまなセラミックス3D部品を作製できます[3]。また、光硬化反応ではなく、光還元という方法を適用すると金属立体構造を造形することもできます[4]。このようにさまざまな材料でマルチスケールの立体構造を形成できるので、医療やエレクトロニクス、マイクロ流体システムなど幅広く応用されています。
1光子マイクロ光造形法の造形方法(引き上げ方式)[1]
光硬化性樹脂を用いて作製したマイクロピンセット[2] 細胞やスフェロイドなど柔らかい生体試料を把持することができます。
光硬化性樹脂にバイオセラミックスを混合して造形したセラミックス3D部品[3]。 骨や歯を再生する医療に応用できます。
青色レーザーによる光還元反応を利用して形成した銀配線[4]
References
[1] 丸尾昭二,“樹脂材料光造形とその応用,”光学,第47巻,第11号, 452−456 (2018)
[2] S. Kozaki, Y. Moritoki, T. Furukawa, H. Akieda, T. Kageyama, J. Fukuda, S. Maruo, “Additive Manufacturing of Micromanipulator Mounted on a Glass Capillary for Biological Applications”, Micromachines , 11, 174 (2020).
[3] S. Maruo,” Stereolithography and two photon polymerization,” Handbook of Laser Micro- and Nano-Engineering, Springer (in press)
[4] T. Komori, T. Furukawa, M. Iijima, and S. Maruo, “Multi-scale laser direct writing of conductive metal microstructures using a 405-nm blue laser”, Optics Express 28(6), 8363-8370 (2020).
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マルチマテリアル光造形法
複数種の材料を組み合わせて3Dモデルを一体造形するマルチマテリアル光造形法の開発を行っています。例えば、絵の具のパレットのように、特性の異なる複数の光硬化性樹脂をガラス基板上に滴下して配置し、それらを入替ながら、3D微小構造体を一体造形する装置を開発しました[1]。この方法を用いると、カラフルな樹脂を使ってマルチカラーの3D微小構造体を作製できます。最近では、樹脂だけでなく、樹脂にシリカ微粒子を混合した材料を用いてガラスの3D構造体を形成したり、バイオセラミックスを使ったセラミックス構造体、生体適合性のあるゲルを使ったソフト3D構造体などを作製しています。これらの3D機能構造体は、医療やフォトニクス、マイクロ流体システムなど様々な分野への応用が期待できます。
樹脂パレットを用いたマルチマテリアル光造形装置[1]
5色の光硬化性樹脂を用いたマルチカラーキューブの一体造形[1][2][3]
References
[1] T. Maruyama, H. Hirata, T. Furukawa, and S. Maruo, “Multi-material microstereolithography using a palette with multicolor photocurable resins”, Optical Materials Express, 10(10), 2522-2532 (2020).
[2] EurekAlert!,NEWS RELEASE,2020.9.16.
[3] The Optical Society,NEWS RELEASE,2020.9.16.
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光駆動マイクロマシンの開発
2光子マイクロ光造形法を用いると、赤血球と同じくらいの微小なマイクロマシンを作製できます [1]。このマイクロマシンは、レーザー光を集光することで、液体中で自由に駆動させることができます。このようにレーザー光の力で微小物体を捕まえて動かす技術は、光ピンセットと呼ばれています。光造形と光ピンセットを組み合わせることで、光駆動マイクロポンプや光制御マニピュレータなどを作ることができます[2][3]。このような光駆動マイクロマシンは、化学合成分析を指先サイズのチップで行う、マイクロ分析システム(ラボ・オン・チップ)などに応用できます[4]。
2光子マイクロ光造形法を用いて作製した光駆動マイクロポンプです。光ピンセット技術によって2つのローターを回転させることで、液体を輸送することができる世界最小レベルのマイクロポンプです [2] 。
2光子マイクロ光造形法を用いて作製した光制御マイクロピンセットです。光ピンセット技術によってピコニュートンレベルの力制御ができるので、細胞などの柔らかい生体試料をハンドリングするツールとして利用できます[3] 。
References
[1] S. Maruo, K. Ikuta and H. Korogi,“Force-controllable, optically driven micromachines fabricated by single-step two-photon microstereolithography,” Journal of Microelectromechanical Systems 12, no. 5, 533-539 (2003).
[2] S. Maruo and H. Inoue, “Optically driven micropump produced by three-dimensional two-photon microfabrication,” Appl. Phys. Lett. 89, no. 14, Art No. 144101 (2006).
[3] S. Maruo, K. Ikuta and H. Korogi,“Submicron manipulation tools driven by light in a liquid,” Applied Physics Letters 82,no. 1, 133-135 (2003).
[4] 丸尾昭二, “光で操るマイクロ・ナノマシンの未来,”化学工業 第58巻,第1号,52-57 (2007).
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超高精細3Dプリンティングによる再生医療の研究
超高精細3Dプリンティングの再生医療への応用研究を行っています。例えば、マイクロ光造形によって3D鋳型を作製し、生体適合性金めっきを施した後、細胞を培養することで、任意形状の細胞シートを作製する技術を開発しました[1]。また、バイオセラミックスを高濃度に分散させたスラリーと呼ばれる泥漿物質を、3D鋳型に注入して、バイオセラミックスの3D構造体を形成する技術を使って、骨や歯を再生する研究も行ってきました[2]。最近では、バイオセラミックスを混合した光硬化性樹脂を直接材料に用いて3D造形することで、細胞を培養したり、組織を再生する足場と呼ばれるセラミックス多孔質体を形成して、再生医療に応用する研究を行っています[3]。
光ファイバーを用いたマイクロ光造形法によって作製したバイオセラミックス3D構造体[3]。骨や歯の再生医療に応用できます。
References
[1] Y. Kobayashi, C. E. J. Cordonier, Y. Noda, F. Nagase, J. Enomoto, T. Kageyama, H. Honma, S. Maruo & J. Fukuda, “Tailored cell sheet engineering using microstereolithography and electrochemical cell transfer,” Scientific Reports 9, 10415 (2019).
[2] T. Torii, M. Inada, and S. Maruo, “Three-Dimensional Molding based on Microstereolithography Using Beta-Tricalcium Phosphate Slurry for the Production of Bioceramic Scaffolds,” Jpn. J. Appl. Phys. 50, no. 6, 06GL15 (2011).
[3] Y. Chen, T. Furukawa, T. Ibi, Y. Noda, and S. Maruo, “Multi-scale micro-stereolithography using optical fibers with a photocurable ceramic slurry”, Optical Materials Express, 11(1), 105-114 (2021).
トポロジー最適化を用いたマイクロデバイスの創製
トポロジー最適化は、ある拘束条件を与えたときに、最適構造を自動的に求めることができる設計手法の1つです。従来、トポロジー最適化によって求められた形状は複雑すぎて作製することが困難でしたが、現在では、超高精細な3Dプリンティングの進化によって、どのような最適構造でも高精度に作製できるようになりました。現在、高性能なマイクロピンセットや、新奇な機械特性や電磁波特性を有するメタマテリアルの作製などに取り組んでいます[1, 2]。
References
[1] 盛一志仁, 古川太一, 下野誠通, 山田崇恭, 西脇眞二, 丸尾昭二, “トポロジー最適化を用いた生体試料ハンドリグ3Dプリント・マニピュレータの開発,” 第11回マイクロ・ナノ工学シンポジウム(オンライン開催) 講演論文集 28A3-MN1-1,2020年10月26日-28日(発表:2020年10月28日)
[2] 孫尽一,久保田将,横山稔,根岸知和,山田崇恭,下野誠通,西脇眞二,丸尾昭二,“トポロジー最適化を用いたマイクロマニピュレータの開発,”日本機械学会2017年度年次大会(埼玉県,埼玉大学),講演番号J2230103,2017年9月4-6日 (発表: 2017年9月5日),優秀講演論文表彰
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